写真や美術の著作権を侵害しないために

著作権についての世間の意識が高まっているためか、近ごろは写真やイラストといった写真や美術の著作権を侵害して問題となるケースが目立っています。

 

フリー素材を使ったはずなのに?

とくに目立つのが、市や公立学校の職員がインターネットでフリー素材として検索して出てきたイラストを広報物やホームページなどで使用したところ、権利者から無断使用を指摘され、賠償金が発生してしまったというケースです。フリー素材だと思い込んだために利用規約などを確認しないまま使用してしまったと想定されますが、例え保護者向けのお知らせのようなクローズド媒体であっても、過去にさかのぼって賠償金が請求されています。
WEBサイトの場合、現在サイト上では表示されていなくても、サーバにデータが残っていたということで、その期間分の賠償金が請求された事例も起きています。

なお、著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と定義しています。写真、イラスト、文章、映像、音楽など、思想や感情を表現した創作物はすべて著作物であり、許諾を得ずに無断で使用すると、著作権のうち複製権や公衆送信権などの侵害となります。

多くの場合、担当者はそのこと自体を認識していて、著作権を侵害しないようにフリー素材を使用しようとしたわけですが、結局はそれはフリー素材ではなかったということ。ネットには、ストックフォトやフリーイラストなどのサービスサイトがいろいろと存在しているので、そのサイトの素材を使ったとすれば基本的には問題ないはず。それなのになぜ、無断使用となってしまったのでしょうか。

 

無償だと思ったら実は有償だった?

実はストックフォトなどのサービスでも、個人使用については無料でも商用使用の際は有償になるもの、商用使用が基本OKでも使える点数が限られているもの、使用方法によってはNGになるもの、クレジット表記が必要になるもの、使用する際は事前連絡が必須となっているものなど、そのサイトや作者によって利用規約が決められています。それをきちんと確認しないで「フリーサイトにあったからどんな場合でも無料使用OK」と思って使ってしまったのかもしれません。

ベストなのはどんな創作物でも、その道のプロに依頼して有償でオリジナルを作ってもらうこと。写真ならカメラマン、イラストならイラストレーター、動画なら動画クリエイターなどです。しかし、どうしても予算的にプロに頼むのは厳しいという場合もあるでしょう。その場合は、以下の3つの方法があります。

 

1.ストックフォトやイラストでも、有償のサービスを利用する

 

有償のサイトでは、1点いくら、もしくは月額いくら、などのように金額が明確に決まっています。まずは会員登録をして、自社の頻度にあわせて利用形態を選んでください。有償なだけあって、無償よりはクオリティが高いものが揃っています。

 

2.自分、もしくは社内のリソースを活用する

 

ご自分で写真を撮ったり、イラストが描けたりするのであればぜひ挑戦してみてください。未知の才能が花開くかもしれません。しかし、ご自身ではどうしても無理、もしくはクオリティに不安があるときは、社内のどなたかに依頼してみましょう。中にはプロ顔負け…という方がいるかもしれません。しかしその方の作品にも著作権は発生しているので、しっかりと許諾を取ったうえで掲載してください。

 

3.利用規約をしっかりと確認して、無償のサービスを利用する

 

無償のサービスを利用するときは、ライセンス形態、商用利用の可否、用途制限、条件などをしっかりと確認してから使うようにしましょう。ただ、無償サービスでは欲しいものがない、あってもクオリティは期待できない場合もあります。

 

そのほか、注意したいこと

一時期もてはやされたAIによる画像生成サービスを使って作られたものを使った場合でも、最近は問題になり、使用停止に追い込まれるケースが出ています。多くの人が目にするものに使用するにはリスクが高すぎます。

著作物の二次使用にも要注意。例えば自社の50周年記念誌用にカメラマンに撮ってもらった自社ビルの写真。自社が依頼して撮ってもらったものですが、撮ったカメラマンの著作物になります。それを勝手にホームページなどに掲載すると二次使用となり、著作権(複製権や公衆送信権)の侵害になってしまいます。その場合は、記念誌以外の使用についても著作権者であるカメラマンと合意した契約書を作成しておくか、都度二次利用の可否についてお伺いを立てるようにしましょう。

お客様や社会からの信頼を傷つけないために、自社から出すものは社内報やオウンドメディアであってもコンプライアンスを重視し、著作権を侵害しないように十分気を付けましょう。

 

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執筆者:ディレクター 西田
ビジネス著作権検定上級資格取得から約2年が経ちました。知的財産検定技能検定2級の試験に向けて、やっと重い腰を上げています。今年中に合格しないと、ビジネス著作権検定上級資格者としてのメリットを活かせなくなる(取得から2年以内は、3級が免除になる)のです。著作権法をおさらいしながら、特許、実用新案、意匠、商標、不当競争防止など、知的財産関連法案をがんばって覚えます! 絶対合格!