社内報を制作する上で避けては通れない著作権の問題。
「この写真を掲載することは、著作権侵害に当たるのか」と悩むケースは多々ありますよね。著作物を著作権者の許諾を得ないで利用すれば著作権侵害となり、法人が侵害した場合は3億円以下の罰金となります。
著作権者からの訴えがなければ問題ないというものではなく「会社の公式な刊行物」である社内報が著作権侵害をしていては、コンプライアンスの面でも大きな問題となってしまいます。
今回は著作権侵害になるかならないかで迷いがちな事例について、Q&A形式で解説します。
Q.お店の外観と料理を写真に撮って掲載してもいい?
A.
建築物は屋外に恒常的に設置されているものなので、その写真を撮って掲載すること自体には著作権の問題は生じず、基本的には掲載可能といえます。ただし、岡本太郎氏の「太陽の塔」に代表されるような創作性の高い建築物は、美術の著作物に当たりますので著作権者に利用許諾を得ることが必要です。一方で東京タワーや国立競技場など、美術の著作物と認められていなくても、利用申請が必要になる建築物がありますので、ホームページなどで確認した方がよいでしょう。
また料理に関しても基本的には著作権は生じません。ただし、アニメや映画のキャラクターをモチーフにした食事を提供する「コラボカフェ」のメニューや、独創性にあふれた盛り付け、店員が繊細な花模様を描くラテアートなど、高い創作性が認められる場合は著作物とみなされ、著作権が発生することがあります。
著作権が発生するかしないかはともかく、お店の紹介記事として掲載するのであれば、その旨をお店に伝え、許諾を得てからにしましょう。
Q.新聞に掲載された芸能人やスポーツ選手、政治家の写真を掲載してもいい?
A.
著作権については、著作権者である新聞社に利用申請をし、使用料を支払えば可能です。ただし、すべての人には自分の顔や姿態をみだりに「撮影」や「公表」などされない権利「肖像権」があります。オリンピックでパフォーマンスを行った芸能人やWBCで活躍した野球選手、国会で発言する政治家など、公人と呼ばれる方が公的な場で撮影された写真は、肖像権侵害には当たらないとみなされますが、一般人の顔が判別できる大きさで掲載されている写真は使用を避けるべきです。
著名人や一般人でもすでに亡くなっている人の場合は、自分の写真を使用されることで精神的苦痛を受けることはないため、肖像権は原則として認められていません。ただし、国によっては没後も肖像権を認められる場合があるので、外国籍の方を掲載する場合は注意が必要です。
Q.ネットの画像検索で出てきた観光地の風景写真をダウンロードして掲載してもいい?
A.
ダウンロードした写真を無断で掲載することは著作権の侵害となりますので、著作権者に利用申請をすることが必要です。観光地の風景写真を利用したい場合は、自治体が運営する観光サイトなどに申請して写真を提供してもらう方法があります。主旨を説明し、写真の貸し出しを申し入れることで、適切に写真を掲載できます。
Q.自分が扮したアニメや映画キャラクターのコスプレ写真を掲載してもいい?
A.
近年、コスプレが著作権侵害にあたるかどうかについて盛んに議論が展開されており、グレーゾーンになっています。したがって著名なアニメやゲーム、映画のキャラクターと分かる場合は掲載しない方がベターでしょう。作品独自のキャラクターではない「ゾンビ」「魔女」「囚人」などの仮装であれば掲載しても問題ありません。
Q.自由に利用できる写真の著作物ってどんなものがあるの?
A.
著作権の保護期間が終了し、誰でも自由に使用できる「パブリックドメイン」になっている著作物があります。利用規約を順守して社内報に活用していきましょう。
パブリックドメインとなった著作物をダウンロードできるサイト(一例)
おもに古写真や公文書がデジタルデータになっています。保護期間が満了している著作物は自由に使用できるようになっています。
保護期間が満了した世界の名画がデジタルデータ化されており、自由に使用できるようになっています。
著作権について正しく理解し、適切に著作物を利用すれば、社内報に掲載するコンテンツの幅も広がりますね。著作権を守りながら、読み応えのある社内報を作っていってください。
<関連記事>
執筆者:ディレクター 大原