世の中には、売れる雑誌を牽引し続ける、名編集長と言われる人たちがいます。
媒体のコンセプトを練り上げて決定し、媒体のすべてに責任を持つ。ライターやデザイナーをはじめ、制作に関わる全てのスタッフのリーダーである。それが編集長です。迷うことがあっても「これで行く!」と最終の判断をする役割を担うからこそ、編集長の存在は重要なのです。
社内報の担当者は、社内報の「編集長」です。社内報という舞台でも、雑誌の編集長たちに負けないほどの媒体愛と情熱ある名編集長を目指し、読者にも会社にも愛される、ワンランク上の社内報を作っていきましょう!
ここでは、名編集長になるため、日々の制作でぜひ実行していただきたいことを紹介します。
(1)執筆依頼は「あなたにこそ書いてほしい」という熱意をこめて
社員が、社内報の重要性を必ずしも理解しているとは限りません。そんな社員に原稿を書いてもらうには「あなたにこそ書いてもらいたい」と、熱意をもって伝える必要があります。
ビジネスライクでドライな依頼では、「自分が書く必然性」が伝わりません。依頼では、人選の理由を明確にし、その上で参加するメリットを伝え、後押しすることが重要です。
たとえば、育児と仕事を両立している「女性管理職」にメッセージをお願いするなら「子育てとの両立の大変さを微塵も感じさせずに、いつも笑顔を絶やさずに仕事にまい進している○○さんに、他の社員の手本になってもらいたい。そうすれば、女性社員全体の働きやすさの向上につながっていくはずです!」…という風に。
依頼は制作工程の最重要ステップと認識して、心を込めて依頼をしましょう。
(2)記事・媒体のコンセプトがぶれないよう、手綱を締める
依頼原稿が思わぬ内容で執筆された、ということも、時として発生します。
たとえば、社内報発行の目的が「経営陣の思いや考えを深く浸透させる」としましょう。
新年の年頭所感で、来期への展望を含めた、社員を鼓舞するためのメッセージを役員にお願いしたのに、年末年始に起きた身の回りのことばかり書き連ねた、エッセイ風の原稿が送られてきてしまった…。極端な例ですが、この場合、どう対応すればよいでしょうか。
媒体の目的から言えば、身辺雑記では思いを浸透させることは難しいでしょう。経営陣の思いを浸透させるには、来期へ向けた意気込みや、社員の共感を生み、やる気につながる力強いメッセージが必要です。難しいかもしれませんが、リライトの相談をしてみるのが社内報としては正しい選択肢です。
社内報が本来の役割を果たすため、例え相手が役員でも脱線しないようにコントロールするのは、編集長の腕の見せどころです。
上記の例に限らず、このような判断をする際に、企画ごとのコンセプトも明確にしておくことが重要です。
たとえば従業員の家族向けに仕事内容を紹介する企画では「家族に仕事内容を理解してもらい、仕事を応援してもらえるようにする」ことが目的になるでしょう。その際、従業員しか分からないような専門用語を多用することは好ましくありません。また、子どもからお年寄りまで読む可能性が高いと考えれば、文字のサイズなども大きめに設定した方が読みやすくなります。業務風景の写真も大きく掲載すれば、仕事をしているときの様子が具体的にイメージできるため、家族からの理解につながりやすくなります。
媒体の手綱を締めて制作にあたる中で、常に読者の目線を忘れないことが、名編集長の条件です。
(3)社内の広告塔になり、社内報のファンを増やす
書店で売られているような、商業雑誌の名編集長たちに共有しているのは「交友関係の幅広さ」です。
彼らが交友関係を広く保つのは、情報収集のためだけではありません。制作の協力者を確保するためでもあり、編集長自身がその広い交友関係の中でインフルエンサーになり、媒体のファンを増やすためでもあります。
社内報も同じです。担当者と親しい人が社内に多ければ、ネタになりそうな情報を集めやすいだけではなく、記事執筆などの協力もお願いしやすくなります。また、社内報の最新号を発行する時にも、担当者自身の告知に目を止める人が、おのずと増えていきます。
交友関係を広げる上でのポイントは、作りたい社内報のビジョンや、社内報を通して作りたい社内風土のイメージに共感してもらうことです。単なるデザインのこだわりなどではなく、社内報に込めた思いに共感してもらうことで、社内報に一段深く興味を持ってもらうことができ、社内で輪を広げていくことができます。
社内で広くコミュニケーションを取って、一人一人の社員との関係を深めながら社内報のファンを増やしていくことも、名編集長の条件なのです。
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なお、話したことのない社員といきなり交流するのは難しいかもしれません。そんな時は、ランチミーティングなどを企画してみてはいかがでしょうか。
社内イントラネットやSNSをチェックし、気になる社員の方に目星をつけたら、社内報担当者として情報収集していることを名目に、数名でランチミーティングを設定してみましょう。労働時間外のため参加の強要はできませんが、1時間程度かつ終わりの時間がはっきりしているランチの時間帯なら、協力してくれる社員も少なからずいるはずです。
「同じ釜の飯を食う」と言うように、食事の場を共にすることは親密な関係の構築につながります。業務の話題・プライベートな話題まで話しながら、社内報に協力してくれる人を増やしていきましょう。
担当者の思いは、必ず社内報のクオリティに反映され、読者に届きます。
社内の人脈と情報に精通した名編集長となって、一号一号、最良のものを目指して制作していきましょう。
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